当社は歯車の旋削から熱処理まで、一貫生産できる歯車メーカーです。
この技術の根源は、昭和6年創業以来蓄積したものであり、これらの技術を駆使することにより、各分野のお客様の信頼を得ております。
仕事を始める前には、つぎのことを常に心がけています。
まず最初に丸材および鍛造材を購入し、これを必要な大きさに切断し、次工程に入っていきます。 ここで、基本的には素材の種類は指定され、図面どおりに仕上げていくのですが、中には用途に合った素材を選ばなくてはならない場合もあります。 これはごく稀なケースですが選択にあたっては非常に注意を要します。 また、素材によっては熱処理時に歪みや質量の変化量を少なくするため、素材の分子を均等化する「調質」という工程が必要な場合が多々あります。 これはやはり「経験と勘」を要する作業となります。
旋削加工では丸材や鍛造材を旋盤やフライス盤により削るわけですが、当然歯を切るための取りしろを考えた上で行ないます。 また、熱処理後は寸法が変わってくる為、これも考慮した上で行ないます。 さらに歯を切る工程、文字通り、「歯切り」で一番気を使う事は歯車製造の上で一番の問題となる歯面に打痕を受けにくくする為に、尖がった歯先にする事を避け、「セミトッピングホブ」という面取り加工を同時に行なえる刃物を使って歯を削るという事です。 この打痕というものが付いてしまった歯車は使い物にならない為、十二分に梱包・運搬の際にも注意を払います。
シェービング加工とは、歯切り加工で大まかな歯面を作り上げた後処理の事です。 シェービングによって更に寸法を1000分の1単位で調整し、精度を高めます。 この工程は出荷寸法に限りなく近い寸法に歯車の歯面を仕上げる為、超微妙な寸法出しが必要となります。当然、熱処理後の寸法変化も考慮しなくてはなりません。 第三者的に見れば、気の遠くなる様な地味な作業の積み重ねが必要です。 このシェービングという工程により、歯車の命とも言うべき歯面の描き出す「歯形、歯すじ」というものが正常かつ均等に出来上がるかどうかが決まります。 また、シェービング加工の前に、歯車と歯車を噛み合せやすくする為の作業として歯の面取り加工が必要な場合もあります。
前述のとおり、出荷される歯車のほとんどに熱処理を施します。 これによって強度を増すことが可能なのですが、焼入れ過ぎても硬いだけでモロい歯車になりますし、焼入れが足りないと強度が不足してしまいます。 熱処理を行なう際は、熱処理後の歯車の断面を顕微鏡で粒子の確認を行ないデータを取ってから慎重に行ないます。 熱処理を行なった金属は必ず、元の寸法とは変わってきますので、全工程にてこれを考慮した寸法取りが必要になります。 また、一口に「熱処理」といっても「浸炭焼入れ・焼き戻し」、「ガス軟窒化」、「高周波焼入れ」等、様々な焼入れ方法があります。 素材によって焼入れ方法を 変える事が一般的です。 当社では例として「浸炭焼入れ・焼き戻し」に触れてみます。 浸炭焼入れの標準的な温度と時間は、約900℃で8時間、焼き戻しに約 300℃で2時間を要します。 これも専門的な技術と経験を要する厳しい作業です。
歯面や歯形については、ほぼシェービングまでの工程で寸法を出してしまいますが、回転体である歯車にとって非常に重要な要素である軸のブレ等を未然に防ぐのが、内外径仕上げ加工です。 この加工は超高速回転する砥石を用いて行ないます。 非常に地味な作業ですが、歯車の伝導・伝達という本来の働きを引き出す為には重要な工程となります。 1000分の1の単位での作業となります。 ここまで来れば出荷まであと僅かです。
前述までの工程を経た後に、最終出荷検査を行ないます。
最新のNC歯車試験機を用いて再度、前述の「歯形、歯すじ」と呼ばれるものが正常均等かつ、規定範囲内に振れ幅がおさまっているかどうかを測定します。
当然ながら各寸法も測定しなおします。
ここで合格すれば出荷となりますが、例えばスプラインという金属の軸に歯が切ってあるものや、相手のある歯車等については、現物の噛み合いテストを行ない、正常に回転するかどうかも調べます。
ここで不良になり、精度修正が可能なものについては「歯研」や 「再シェービング」をさらに行ない精度維持を確保して出荷となります。
修正不可能な不良品を最終出荷検査で発見した際には、それまでの材料代はもちろんの事、費やした加工費=人件費も水の泡となってしまいます。
歯車製造に限った事ではないですが、歯車製造にもリスクはつきものだと言えるでしょう。
ごく簡単に、工程に分けて歯車加工技術の一端をご説明しましたが、ご理解いただけましたでしょうか。
日常生活には欠かせない「歯車」というものをあらためて今までとは違った新鮮な眼で見ていただけると幸いです。